皆さんは、”妊活”と聞いて具体的な内容は浮かびますか?
一言で妊活といっても、少しタイミングに気を付ける”タイミング法”といった些細なことから、体外受精など本格的な不妊治療までいくつかの種類が存在します。
今回は、妊活についてまだ勉強中という方のために、不妊治療の方法や特徴をご紹介。
まずは、妊活の方法を総合的に理解していきましょう。
目次
【深刻度順】授かるための治療方法6選
妊活成功に向けての治療方法といっても、「体外受精という言葉は聞いたことがある」くらいの方も多いと思います。
「すぐに妊娠しなかったら不妊治療すればいいや」なんて考えてはいませんか?
不妊治療には、不妊となる原因によって肉体的な負担が軽いものから、痛みやリスクも伴うものまであり、段階的に治療を進めるのが一般的です。
なので、今回は不妊の深刻度が低い順で妊娠するための治療の種類を紹介していきます。
下に行けば行くほど不妊の原因も重く治療や妊娠時のリスクも上がるので、妊活のために今の内から認識しておいてくださいね。
1.自然妊娠/タイミング法
最初に紹介するのは、自然妊娠で子供を授かるためのテクニックであるタイミング法。
自然妊娠とは、通常の性交渉により妊娠に至ることを指します。
いきなりですが、妊娠には年齢が大きく関係しているのをご存知でしょうか。
20代の夫婦など精子・卵子ともに健康的な状態であれば、すぐに妊娠できると思っている人も少なくないはず。
しかし、一般的に妊活1ヶ月間で自然妊娠する割合は、25歳〜30歳でも25〜35%と低めなんです。
ただ、年齢が35歳をすぎると18%、40歳は5%と一気に低下していくことがわかっています。[出典]
自然妊娠が当たり前と思っている人にとって、確率の低さに驚くはず。
なので、少しでも自然妊娠の成功を高める方法が必要なんです。[出典]
タイミング法のやり方は、妊娠する確率が高い時期を狙って性交渉をすることといった分かりやすい方法です。
女性には、「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」という4回の周期が約1か月ごとにきます。[出典]
よく女性がいう「生理周期」とは以上の周期の総称を指すんです。
中でも最も妊娠する確率が高いのは、「排卵期」。
排卵期になると、卵子が卵巣から卵管へと放出されるため精子と出会うことができる時期とも言えます。
しかし、卵子は排卵されてから24時間しか生き残ることができません。
精子の生きの良さを考えると、排卵が始まる2~3日前に性交渉するのが最もベストなタイミングと言えます。[出典]
ちなみに、排卵して妊娠できなかった場合、妊娠の準備のために厚くなった子宮内膜や卵子が血液とともに外へと流れ出る時期が「月経期」。
月経期が一番妊娠する確率が低いと言われています。
このように、自然妊娠を望む場合でもタイミングはとても大事です。
闇雲に性交渉の数を重ねるのではなく、きちんと女性の周期も理解することで妊娠成功へと近づきますよ。
2.シリンジ法/人工授精(AIH)
自宅妊活をする上で最近よく聞くのがシリンジ法。
シリンジ法とは、男性がマスターベーションで採取した精液をシリンジ(ハリのない注射期のようなもの)を使って女性自ら膣内に注入する方法です。
「タイミングを重視したいが時間が合わない」「性交渉の負担を減らしたい」などの理由で使う女性が増えている方法でもあります。
実際にタイミング法に活かしたいと考えてシリンジ法キットの購入をするユーザーも多く、ネットの口コミでも広まってきていることことも事実。
自分で購入して自宅でできるうえに、身体的にも金銭的にも負担が少ないので妊活を億劫に感じている人にはかなり喜ばれています。
ただ、課題としては精子や卵子の質が元気でないとあまり意味がない点。
そもそも性欲が弱くて回数が重ねられないという場合には、精子の生成にもかかわる男性ホルモンのテストステロンレベルが低めで、精子の質も著しく低いという可能性は否めません。
いずれにせよ、男性の精子の質や男性ホルモンが低ければ妊娠自体の可能性を低くしてしまうので、男性の方にはテストステロン検査をしてからシリンジ法に臨みましょう。
3.人工授精(AIH)
次に紹介するのは、人工授精(以下、AIH)。
AIHからは徐々に不妊治療と呼ばれる種類に入っていきます。
一般的にAIHが勧められるのは、タイミング法で授からなかったとき。
気になるやり方は、女性の排卵期に合わせて、洗浄濃縮した精液/精子を子宮内に直接注入するだけです。
通常の性交渉では子宮入口に精子が放たれますが、AIHはさらに奥の子宮内に精子を注入するので、タイミング法よりも妊娠しやすい方法となっています。
また、処置も1分程度で完了し、基本的に痛みもないため女性側の負担も少ないと言えるでしょう。
費用に関しては、令和4年4月からAIHも保険適用となったため、病院・クリニックでは3割負担となりました。(※ただし、保険適用の年齢制限あり)[出典]
今までの費用は、人工授精だけで1回あたりの費用は2万円ほどで、診察などその他費用を含めるとおおよそ5万円。
しかし、保険適用となったことで1回あたり2万円弱となりました。[出典]
自己負担額もだいぶ抑えられ、さらに子宮内まで精子を運んでくれるためシリンジ法よりも妊娠を期待できる方法とも言えるでしょう。
あるウィメンズクリニックでのアンケートでは、2回ほどのAIHで妊娠した確率が64%を超えたという結果も出ました。[出典]
また、精子の質が悪かったり、EDにより性行為が難しい場合にでもAIHであれば自然妊娠を望める方法でもあるため、男性側の不妊が原因でも自然妊娠を望めますよ。
3.ホルモン治療
ホルモン治療とは、主に女性のみ対象の治療法で、排卵を促すなど妊娠しやすい体へと変えていく方法です。
通常、クリニックではタイミング法から人工授精へとできるだけ自然妊娠できるような方法を提案されます。
しかし、これまでの方法で妊娠ができなかった場合、女性側もしくは男性側に何らかの原因がある可能性が高くなります。
そして、女性側に排卵障害や黄体機能不全により着床不全が発生していると考えられる場合に、ホルモン治療は行われるんです。
ちなみに排卵障害とは、無月経や無排卵などで排卵排卵してもうまく育たないといった状態のこと。[出典]
黄体機能不全とは、女性ホルモンがうまく子宮内膜へとうまく機能しないために妊娠できないといった状態のことを指します。[出典]
以上の症状が疑われたときは排卵誘発剤などを使い、排卵を促してからタイミング法などへつなげていくことで妊娠へと導いていきます。
しかし、ホルモン治療では副作用があり、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしたり、多胎妊娠といった双子以上の子ができやすくなったりする可能性が高くなってしまうんです。
また、ホルモン治療では吸収速度が速いことから筋肉注射を用いることが多くあります。[出典]
そのため、副作用の心配に加えて、筋肉注射の痛みを辛く感じることもあり、女性にとっては心身ともに負担を感じる治療でもあるのです。
それから、不妊治療において男性へのホルモン治療は行いません。
「テストステロン直接注入すれば、精子の質が高くなるのでは…?」と思うかもしれませんが、実は逆。
テストステロンを直接体内に入れてしまうと、本来男性ホルモンを作る睾丸が働かなくなってしまいます。
結果として、精子の質が低下してしまうことに。
なので、男性がテストステロンレベルを上げるためにできるのは、健康的な生活を続けていくこと。
もしも、パートナーにホルモン治療が必要だった場合は、辛さを受け止めて寄り添ってあげることが大切です。
5.体外受精
体外受精からは高度高度生殖医療(ART)となります。
手順は以下のステップ。
- 排卵誘発剤(ホルモン治療)で、複数の卵胞を育てる。
- 超音波を用いて、卵胞の位置を確認しつつ卵子を採取
- 男性から精子を採取し、運動性の高い精子を選別。洗浄して濃縮する(恐らく精液を洗浄・濃縮)
- 2で採取した卵子を入れている培養液に精液を注入。培養液内で受精させ、培養。
- 分割した受精卵をを選別し、質の良いモノを子宮内へ移植する。
体外受精は、女性側であると卵管に問題が有る場合に有効な方法です。
また、男性側で見ると、精子の数が少ない乏精子症や精子の運動率が悪い精子無力症などのときに、体外受精が有効な方法ですね
しかし、たとえ男性側に問題があったとしても、体に負担がかかるのは女性側。
特に体外受精では、膣内から細い注射針のようなもので卵子を採取する採卵に痛みを伴います。
体外受精といっても女性が痛みに耐えていることはきちんと理解してあげなければいけません。
ちなみに、今までは高額だった体外受精も令和4年4月より保険適用となっています。(※ただし、保険適用の年齢制限あり)[出典]
一例として、あるクリニックでの体外受精の費用を見てみると、今までは「採卵」と「移植」の費用を合わせて約73万円ほどかかっていました。[出典]
保険適用後は「採卵」と「移植」で約20万円ほど。
かなり負担額が減りましたが、それでも1回の体外受精にかかる費用は高額です。
女性の体の負担と費用を考えても、男性としてはできる限り自然妊娠の実現を目指して努力した方がいいと言えます。
6.顕微鏡受精
最後に紹介する方法は、顕微鏡受精。
プロセスは基本的に体外受精と同じですが‥、精子の質が非常に悪く培養液の中でも受精卵を得るのが難しい場合に適用されるんですね。
顕微鏡受精では、細い管(注射器のようなもの)に精液を入れ、顕微鏡を覗きながら卵子に直接精子を注入して受精させます。
顕微鏡受精は、体外受精に追加する形のやり方なので、クリニックのHPにも体外受精のページに書いてあることが多いです。
費用は、体外受精にかかる額に3万円から6万円弱プラスされることがほとんど。
顕微鏡受精に関しても令和4年4月より保険適用となっています。(※ただし、保険適用の年齢制限あり)[出典]
しかし、体外受精の費用約20万円ほどに加算されるので、顕微鏡受精の費用も合わせると25万円以上になることも…。
さらに、体外受精とのプロセスは変わらないので、女性への負担もかかってしまいます…。
不妊治療のメリットとデメリット
ここまで6つの治療方法について紹介してきました。
不妊治療は自然妊娠とは違い、メリットとデメリットが存在するので紹介していきます。
不妊治療についてもう一段階踏み込んで理解していきましょう。
メリット
辛いことが多いイメージの不妊治療ですが、自然妊娠とは違ったメリットがあります。
ここからは、不妊治療に関するメリットを2つご紹介。
妊娠の可能性が低い人でも妊娠できる可能性があがる
不妊治療の最も大きなメリットは、自然妊娠の確率が低い人でも妊娠に至る可能性を飛躍的に高くすることができる点です。
例えば、EDなどにより性交渉が難しい男性でもシリンジ法などであれば、クリニックに通わずとも妊娠の確率を高める事ができます。
「実は、病気などで自然妊娠が望めない状態だった」と後からわかっても、病院で適切な不妊治療を提案してもらえるなど、妊娠できる方法があるというのもメリットの1つです。
治療に伴う診察により関連疾患の発見に繋がる
妊娠した際、出産までにとても多くの検査を必要とします。
これは不妊治療を始める人でも同じです。
不妊治療を行う際には、安全に妊娠から出産へと移行できる体なのか事前に検査を行う必要があるんですね。
また、不妊治療でも毎回診察を受けます。
なので、重大疾患などが早期に見つかることも少なくありません。
特に現代では、定期的な検診を受ける人は少ない傾向にあります。
不妊治療であっても、病院で診察するというのは健康に生きる上でもとても大事な機会とも言えますよ。
デメリット
妊娠の可能性が高くなる不妊治療ですが、デメリットもあります。
特に、高度不妊治療になるほどデメリット顕著なので、今からでも頭に入れておきましょう。
肉体的・精神的にも辛い事が増える
”不妊治療”と聞くと辛いといイメージが先行してしまいませんか?
その通りで、不妊治療の種類に関係なく肉体的にも精神的にも辛いことが増えてしまいます。
特に、辛さを感じるのはゴールが見えずらい不妊治療中に周りの妊娠報告を聞いてしまうこと。
「どうして私のもとには赤ちゃんが来ないのだろう」そういった気持ちが不妊治療を続ければ続けるほど大きくなってしまいます。
また、不妊治療で毎回いかなければいけない病院のためにスケジュールを調整しなければならないこと。
周りにはなかなか言い出しづらい話題のために、置かれている状況のきつさをパートナー意外と共有できないことも辛さの原因です。
さらに、不妊治療ではタイミングを図って性交渉をしなければならないことも増え、寝不足が続くなどお互いの体への負担も多くなっていくことも。
これらは負担と感じるほんの一部です。
子供のためにと頑張ることを必要とされますが、やはり辛いことは多いと覚悟しておいた方が良いでしょう。
金銭的な負担も大きい
先程の6つの治療を紹介したときにも書いていますが、不妊治療は種類によって金銭的な負担もかなり大きいです。
令和4年4月より不妊治療は保険適用とはなりましたが、それでも不妊治療の回数を重ねれば高額となります。
厚生労働省が不妊治療費が保険適用となる前の2020年に、不妊治療の医療費に関する調査をしています。[出典]
負担額は不妊治療の種類で大きく変わり、タイミング法を採用していた人で最高100万円ほどの費用負担がありました。
一方、体外受精または顕微鏡受精を受けていた人では、金額が大きく上回り、最高500万円以上もかかっている人もいたという結果になっています。
不妊治療は採用された方法で妊娠できないと、どんどん高度不妊治療へと進んでいくため驚くほどあっという間にお金がかかってしまうことも。
費用面を負担できずに不妊治療をやめている人もいるので、健康的に生活するなど今のうちにできることはやっておいた方がいいのではないでしょうか?
子供に障害が残る可能性も報告されている
子供を授かるというのは、本当に奇跡でとても喜ばしいこと。
しかし、台湾・高雄医学大学での研究によると、自然妊娠で産まれた子供よりも顕微鏡受精で産まれた子供の方が自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)や発達遅延のリスクが高いとの結果が出ました。[出典]
ASDでは、言語以外の方法で相手の感情をとらえることが難しいといった特性があります。
目と目が合わない・言葉の発達が遅い・語彙が広がらないなど、3歳までに診断が可能ですが、知的能力障害は伴いません。
そのため、本人は不自由さを感じていても、周りからは”少しみんなになじむのが苦手なとっつきにくい人”くらいにしか認識されないことも多々。
今では、成人になってから実はASDだった、とわかる人もいます。
ただ、顕微鏡受精でASDのリスクが高くなると分かっていても、多くの人では子供が欲しいという気持ちは揺るがないと思います。
妊娠には年齢が大きくかかわるため、こうしたデメリットも踏まえ早い段階から妊娠・出産について話し合う場を設けるのも大切だと言えますね。
まとめ:不妊治療は体・心・金に多大なる負担。まずは自然妊娠の実現を目標に。
これまで、自然妊娠を促すタイミング法から高度不妊治療の顕微鏡受精まで不妊治療の種類について紹介してきました。
”不妊治療は想像するよりも大変な治療である”ということを理解していただけたかと思います。
女性の卵子というのは産まれたときから数が決まっていて、加齢とともに減っていくしかありません。
なので、加齢に伴う卵子の数の減少や老化は止めることができないのです。
対して、精子は適度な運動や十分な睡眠、栄養のある食事を続けていけば、質の良い精子に改善することができます。
不妊治療は肉体的・精神的にも負担がかかり、女性や子供へのリスクが高くなることもある治療方法です。
男性の皆さんは自然妊娠を目指して、サプリメントなどで普段の生活を改善していきましょう。